「学校くるな」
「消えろ」
 
その乱雑な文字は、石川梨花の目に否応なしに飛び込んできた。
 
学校の下駄箱で、ローファーから上履きに履き替えようと、自分の靴箱から上履きを取り出し、スノコの上に置いた時だった。
上履きの中に、片方ずつ、それらの文字がマジックで書かれている。

梨花はローファを脱ぎ掛けた動作を止め、それらの文字に見入っていた。
 
なぜ、なぜ私の上履きに。
 
「ちょっと、梨花、何してんの?」

肩にポンと叩きながら、水野紗枝が話しかけてきた。

私は慌ててその上履きに足を入れた。文字を隠すように。
 
紗枝は、同じクラスになってからよく話をしたり、一緒に登下校してくれる「友達」だ。紗枝が私の事を友達と思ってくれているかはわからない。とにかく学校にいる間は仲良くしてくれている、数少ない一人だった。
 
「ねぇ、昨日のドラマ、見た?」

動揺を抑えながら、脱いだローファーを持って靴箱にしまう。紗枝も相槌を打って、そのドラマの話をしながら、下駄箱を後にし、教室のある東校舎の二階へ向かって歩き始めた。
 
足の裏が、気持ち悪い。
 
「学校来るな」
「消えろ」
 
明らかな、悪意のあるいたずら書き。

二年四組 石川 と書いてある上履きに対して、そのいたずら書きは、私に対して何者かが陰でそう罵っている、そう思ったとたん、寒気がした。