かなえが学校に来なくなる一日前。

梨花は、かなえの上履きを見つけてあげたいと切に思っていたが、それはあっさりと見つかった。

二時間目の休み時間、女子トイレの個室の中に入って、用を済ませた後ふと、隅にあった汚物入れの奥が、いつもより隙間が空いていることに気が付いた。

もしかして。

汚物入れの箱を恐る恐るずらすと、上履きが一組、靴の裏側を合わせて置かれていた。

それを取り出すと、かなえの名前が綺麗な字で書かれていた。
その上履きは、まだ新調したばかりで、それがかえって痛々しかった。

上履きを隠されて、見つからずに新調して、それもまたすぐに隠されてしまう。
この上履きを、何とかしてかなえに渡したい。

靴下のまま、先生にも言わず、スリッパも借りずに我慢して過ごしているかなえに。

そのままダイレクトに手渡しするのが、もちろん一番早いが、そんなことをしたら、私がかなえに手助けしたことになってしまう。
私は元あった場所に、かなえの上履きを置き、汚物入れでそれを隠した。

たまたまポケットの中に入っていた、コンビニのレシートの裏に、ペンでメモ書きした。
 
「二階東の女子トイレ 入り口から三番目 汚物入れの奥にかなえの上履きあります」
 
それだけ書いて、またポケットにしまい、個室を後にした。
 
女子トイレを出ると、少し前にちょうどかなえが立っていた。
かなえは、トイレの前でうろうろと様子をうかがっていた。

上履きが無いから、トイレに入りにくいのね。
ほんとに、バカなんだから。オシッコまで我慢して。かなえのバカ。
 
一緒にトイレから出てきた紗枝と美和に、ちょっとごめん、先教室戻ってて、といってかなえの目の前に歩み寄った。

かなえは、ちょっとびっくりした様子だった。私はおもむろに彼女の左手を握り、右手でポケットの中のレシートをつかんで、かなえの手の中にむりやり握らせた。

それ、見て。

ほとんど声を出さずに、口を大きく開けて伝えた。

かなえは、ぽかんとしていたが、私が手を放すと、すぐにレシートを見て裏返し、そのメモを見てくれた。
 
かなえは、ゆっくりとうなづき、私に、ありがとう、と口パクで返してくれた。
かなえは、もう躊躇せずにすぐ女子トイレに入っていった。
 
先に戻った教室で、私はかなえの上履きを履いている姿を見て、ほっとした。
 
そんな、やりとりがあったのに、次の日からかなえは、学校に来なくなってしまった。