思い詰めての、「イジメ」の告白。
彼女、僕のクラスの生徒、佐藤玲子。
彼女は、陰湿で執拗な、彼女の靴に対する嫌がらせに、耐えていたんだとわかった。
そして、今日、それが耐えきれなくて、こうして僕に相談してきてくれた。
それが少しだけ、うれしかった。
 
彼女は、少しずつ、今まであった出来事を、話してくれた。
 
「・・・そうか・・・それで最近ずっとって・・・いつごろからだ? そうやって佐藤の靴、いたずらされ始めたのは?」
 
「・・・先々週。・・・木曜日かな?・・・」
「朝、学校に来たら、上履きが、私の下駄箱に入っていなくて・・・」

「うん」

「・・・探したら、下駄箱の上に、置いてあって・・・」

「うん・・・」

「・・・それから、ほとんど、毎日・・・毎日のように、上履きが無くなってて、・・・先週、金曜日は、どこ探しても無くて。。。学校の購買で新しい上履き買って・・・」

「そうか・・・」
 
改めて、彼女の履いていた、真新しい上履きを思い出す。
彼女は、また少し間をあけて、今度は自分から話し始めてくれた。
 
「今週は、今度は靴に・・・ローファーに、ノートの紙を丸めたようなゴミを入れられたり、おとといは水がいっぱい入ってて、昨日は画鋲が・・・」
「・・・今日、帰ろうとしたら・・・靴が、無くて・・・どこさがしても・・・無くて」
 
彼女は懸命に泣くのをこらえていたが、このときは完全に涙声になっていた。聞いているのがつらくなってきた。
玲子という生徒は、ただでさえ大人しく、あまり友達もいないようなタイプだった。
 
「・・・いままで、本当につらかったね。今日、先生に相談してくれて、ありがとう」
「・・・ところで、ご両親には、このことは・・・」

玲子は首を小さく横に振った。
 
「佐藤、おまえ、誰か、友達・・・クラスの誰かに、このこと相談したか?」

また、玲子は首をふった。
 
「本当にひとりで、よく我慢して学校に来てくれていたんだね。。。先生、気が付いてあげられなくてごめん」

玲子は黙ったまま、鼻を少しすすっていた。