私の上履きが、無い。
これで三度目だ。

おととい、高校に入ってはじめて、上履きを隠された。
おとといは、下駄箱の上に、無造作に置かれていた。上を見上げると、上履きシューズのかかとに、「相原」の文字。私の苗字。背の低い私は、他の人の下駄箱を勝手に開け、脚の踏み台を作り、よじ登るようにしてなんとかその一組の上履きを取った。

昨日は、下駄箱の周りを探し回り、見つけたのが、ゴミ箱の中。他のゴミはほとんど捨てられていなかったのが幸いだったが、ぽつんと、寂しそうにゴミ箱の一番底に、「相原」と書かれた上履きを取り出した。
深いため息をひとつついて、私は上履きを捜すことにした。下駄箱の上を眺め、ゴミ箱を見ても、今日は見つからない。
仕方なく、学校に履いてきたローファーを自分の靴箱に入れ、白い靴下のままで、下駄箱を後にし、冷たい廊下の上を歩いて、教室に向かった。
 
私の名前は、相原 瞳。公立高校の二年生。
私のクラスでは、イジメが横行していた。

男女とも、一人ずつ、イジメのターゲットとなっていた。
先々週まで女子のイジメられっこだった、片倉優子さんは、先週から学校に来なくなってしまった。
それで、今、私がターゲットになっている。
 
男子は、木村雅彦君。今も男子を中心にイジメにあっている。
片倉さんも、今の私と同じように、靴下のままで教室に入ってくるのを何回も見かけた。
体育の後、女子更衣室で、制服を隠され困っている片倉さんに対して、数名の女子が体操着を無理やり脱がして下着姿のまま、更衣室に放置されることがあった次の日から、彼女は学校に来ていない。
木村君がイジメられているのは、彼が同じクラスの女子の靴にこっそりとイタズラしていたところを、現行犯でその靴の持ち主の友達に見つかったから。
噂話なので、どんなイタズラかは私にはわからない。何かエッチなことが関係しているようだ。
上履きを履いていない私の足元を、皆がジロジロ見ているのを感じた。私が片倉さんに対してそうだったように。
一時間目の授業が終わった。
私は、授業中から、トイレに行きたくなっていた。
上履きも履かずに、濡れているトイレの床の上を歩きたくない。困った。
ねぇ、あのぅ、ちょっとたけ上履き貸してくれない?
勇気を出して、大人しそうな子に話しかけてみた。でも案の定その子は何もいわずに、友達と私の前を立ち去った。
私はあきらめて、靴下のままでトイレに行くことにした。
 
放課後、下駄箱の前で、私は呆然と立ち尽くした。
靴が、無い。
私のローファーが。
一日中、靴下のままで過ごして、すでに靴下はひどく汚れていた。
さらに、追い討ちをかけるように、無くなった私の靴。
これで、私の靴は学校に一足も無いことになる。

どうしよう。どうしよう。