私たちは、四階のトイレから階段で一緒に一階に
ある下駄箱まで下りて行った。

声、かけてくれて、ありがとう。

靴下のまま、片方の上履きを右手に持ちながら、木村君に話しかけた。
木村君は、黙って、いいよと軽く首を振った。
 
あのね、木村君って、女の子の靴、好きなの?
勇気を出して、聞いてみた。

木村君は立ち止まり、私の顔をじっと見ては、すぐ顔が赤くなり、うつむいてしまった。
私、そういうこと、わかる気がする。カッコいい先輩の靴を見ると、なんかドキドキするの。
そういうと、木村君はまた顔をあげた。
 
「・・・う、うん。好きな女の子の靴見ると、なんか、触れたくなるというか・・・」
 
そう、じゃ、この上履き、木村君にあげる。
 
「えっ!」
 
木村君は驚いて、差し出した私の右手にある上履きを見つめていた。
 
だって、かたっぽじゃ、しょうがないし、それに靴、一緒に探してくれたから。
ねっ、と少しだけ微笑んで、同時に木村君の左手をつかみ、片方の上履きを持たせた。
 
私の上履きでも、いい?
 
木村君は、何も言わず、大きく首を縦に二回振った。
それでよかった。

自分の靴が、男子トイレに隠されて、上履きの片方は行方不明。
そんな最悪な一日だったけど、なぜか今は幸せな気分。
木村君が、大事そうに、私の上履きを両手でぎゅっと、包んでくれていた。

まるで、私が包まれているような気分になった。