「先生…取り込み中ちょっと・・・」
 
玲子がトイレの出来事を先生に告白した相談室に、学年主任の先生が戸をたたいて開け、少しだけ顔をのぞかせて倉橋先生を呼び出した。
 
玲子の担任、倉橋南は少しだけ驚いた様子で席を立ち、少しだけ待っててね、と玲子に声を掛けながら立ち上がって、相談室を後にした。
 
玲子は、まだ涙を止めることができなかった。
今まで、誰にも相談できなかったいじめの事実。
相談したら、どうなるか、分かっていながら、一方で誰かに相談しなければ崩れてしまいそうなほど、追い込まれていたのも事実だった。
いじめを告白して、それを思い出し、悲しくて泣いているのか、相談できない悩みから解放されて泣いているのかは、玲子本人にも分からなかった。
 
しばらくして、相談室の扉が開いて、南が入ってきた。
 
「ごめんね。 ・・・ほら、入りなさい。」
 
玲子に声をかけたかと思うと、扉の向こう側にいる誰かに、相談室に入るよう声をかけている。
玲子は、外に誰がいるのか、気にならずにはいられなかった。
 
外にいる誰かが、くずっているのを待ちきれず、南は腕をつかんで相談室に招き入れた。
 
玲子は、それが誰かすぐに分かったが、驚いて声を出すことができなかった。
 
そこに立っているのは、翠だった。
 
すでに、泣きはらした顔で、玲子と目が合う翠。
次の瞬間、翠は玲子の前でがくっとひざまずき、泣き崩れた。
 
「・・・ごめん、ごめんね・・・玲子・・・」
 
何度も何度も、繰り返し、玲子に対し許しを請う翠を、玲子はただ呆然と見つめることしかできなかった。
 
(続く)