「もうこれ以上、私…黙っていられなくなって…」
 
翠が話し始めたのは、先生が翠を椅子に腰かけるよう促し、しばらくしてからのことだった。
 
「先週の火曜日の休み時間、トイレに入ったら、玲子と、それから…」
 
そこで一瞬の間が開いた。
 
「…北河さんと、星野さんと、木島さんがいて、玲子を取り囲んでいました。」
 
翠は覚悟を決めて、ごくんと唾を飲み込んで彼女たちの名前をぶちまけた。
 
玲子は黙って聞いていたが、彼女たちの名前が翠から発せられた時、大きく目を見開いて翠を見つめた。
翠は、驚いている玲子の瞳を見つめ返し、「大丈夫だから」と力強いメッセージを送って、小さく頷いた。
 
「玲子と、北河さんたちの様子を見て、すぐに状況が分かりました。玲子が…トイレに行きたいのに、邪魔をしていること。…玲子は、私に、目で「助けて」って訴えてきたのに、私…無視して、自分だけ用を足して…」
 
先生が、今度は翠の背中をさすり始めた。翠はまた、大粒の涙を右の頬に垂らした。
 
「教室に戻った後も、…玲子の様子を見て、まだトイレに行かせてもらえてないことも、分かっていたのに…私、わたし…」
 
そこまで話した後、堪え切れなくなり、うつむいて声をあげて泣き出し始めた翠。
そんな翠を見つめて、もらい泣きする玲子。

先生だけは、翠に気を掛けながらも、強い憤りを胸に秘めていた。