痛い・・・
くるぶしの、下のあたりで、ローファーの硬い革が歩くたびにあたる。
高校から最寄り駅に向かう帰り道。
もう、我慢できない・・・
細い路地に入って歩くのを止め、周りに誰もいないことを確認して、靴を脱ぐ。
その、くるぶしの下、痛みを感じる部分が、うっすらと白い靴下を赤く染めていた。
靴擦れ。
用意していた絆創膏をカバンから取り出し、靴下を下ろして、患部に張り付けた。
靴下と、靴を履きなおして、歩き始める。
やはりまだ痛みはあるが、これなら我慢できる。
新品のローファーを履くと、たいていの人は、こんな靴擦れに悩まされる。
今は5月末。
周りのみんなは、もう新しい靴に慣れて、靴擦れもしなくなるのに、私は・・・
おととい、新調した、茶色のローファー。それを今履いている私。
これで、4月に高校入学してから、もう4足目になる。
靴が、無い。
学校の下駄箱で、自分の靴箱のふたを開けると、そこにあるはずの、私の靴が、無くなっている。
最初は、上履きだった。
ありきたりの、バレーシューズタイプの学校指定上履き。
毎日のように、無くなる上履き。探して見つかることもあったけど、2足目が無くなった時、あきらめて、家に毎日持ち帰ることにした。
それからだった。
今度は、ローファー。
金額にして、上履きの約5,6倍もするローファーを、何のためらいもなく隠し、捨てる誰か。
いくら探しても、見つからなかったので、先生に相談した。
先生は、次の日の朝、私の靴が無くなったことを話してくれたが、それ以外は特に無く、何日かすると、また靴を隠される、その繰り返しで、先生に言うこともあきらめてしまった。
だから、私のローファーはいつまでも新品同様。
だから、いつまでも靴擦れに悩まされる。
この、おととい新調したばかりの茶色のローファーも、いつまで私に履かれるのだろう。
できれば、このまま慣れるまで履いていたい。
(完)