「失礼しました」

軽くお辞儀をして職員室を後にする。
先生に相談ことで、ほんの少しだけ気持ちが楽になったような気がする。

でも、でも…。

私の中にある不安が消えることは無かった。

先生は、明日クラスのみんなに、私の上履きの事を話して、皆に考えてもらうことを約束してくれた。
でもそれが、かえってクラスの空気を悪くしてしまうのではないか、私のせいで明日のスタートが気分の悪いものになってしまわないか。
そうしたら、また私に対して、嫌がらせをしてくるのではないか、と考えてしまう。

不安で胸がいっぱいになりながら、私はいつのまにか下駄箱にたどり着いていた。

自分の靴箱の蓋を開き、ローファーを取り出して、床に置き、同時に上履きを脱いで、その上履きを右手に持って、自分の靴箱に入れようとした。

また明日、この上履きが消えていたら…

そう思うと、上履きから右手を離すことができなかった。

持って帰ろう…

革製のカバンを開ける。教科書やノート、筆箱で一杯に詰まっていて、とても上履きを入れるスペースが無かった。

それでも、入れ方を工夫して、少しだけ隙間を作ることが出来た。
その薄い隙間に、上履きを片方ずつ、ぺたんこに潰しながら押し込んだ。上履きの裏は当然汚かったが、気にしないことにした。