次の日、私の「悪い」予想は当たらなかった。
私の身に、何も起こらなかったのである。

朝のホームルームで、担任の川島先生は、私の上履きに起きた出来事について話し、自分がそんなことをされたらどう思うか、皆に考えさせた。
何人かは先生に指名され、「幼稚なことだと思います。」とか、「そんなことでしか表現できないなんて、した人がかわいそう」とか、優等生的な発言をしていた。

先生は、クラスの誰かが犯人だとは決めつけずに、皆の「良心」に問いかけた。

それが、先生の、私に対する配慮だということはわかっていた。
それでも、一方で、上履きが無くなっているならともかく、隠された2回共、私の教室内で見つかっているという事実は、クラス内で起きているイジメであることを明確に示していると思える。
それなのに、「穏便」に過ぎるとも思える、先生の対応が、頼りなくも思えた。

その次の日も、特に何もなく過ぎていった。
その一日が終わろうとしている下校時間、私は自分の靴箱を開けて、絶句した。

私の、ローファーが、無い。

ローファーの代わりに入っていたものがある。
封筒に、丁寧に入っている「手紙」。

私は、それを恐る恐る取り出して、その手紙を開いた。

「村上 由依。
 もうこれ以上、先生にチクルな。今度チクったら、男子に襲わせる」

手紙を持つ手が震える。
そこに書いてあることの意味は分かっているが、本当に現実として私に起きた出来事であるか、信じがたかった。

でも、帰りたいのに帰れない。靴を隠されて。
どうしよう。。。

また、先生に相談すれば、少しは気が楽になるのかもしれない。
でも、この手紙の「警告」を無視するわけにもいかない。
自分の身の危険を、はっきりと意識せざるを得なかった。

このまま、帰ろう。

どこかにあるかもしれない、私のローファーを探す気力は残っていなかった
とにかく、学校の外に、早く飛び出したい。その思いが強くなり、私は上履きのまま、下駄箱を後にし、足早に学校の正門の外へと歩き出した。

「1-3 村上」と甲の部分にマジックで書かれた上履き。

その姿のまま、私はいつもの駅の階段を上り、改札を通って、ホームに降りる。
やってきた列車に乗り込んで、他の学校の学生や、会社勤めの人、お年寄り、その中でその目立つ上履きを履いて、ドアの片隅に立って、遠くの景色をぼーっと眺める。

誰もが、一目で「上履き」だとわかってしまう、自分の足元をあまり気にしないようにして、親への「言い訳」を考えていた。