放課後。

今は使われていない、古びた実験室で、高校一年の長野美緒が、ある物を探していた。
西に傾いた日の光が、部屋に差し込む。
時間はもうすぐ4時。午後の授業と掃除が終わってから、1時間は経過していた。

ガラガラッ。

突然その部屋の扉が開き、驚いてその扉に向けて振り返る。

「誰? ・・・ですか?」

恐る恐る、扉から入ってくる人物を見極めようとしていた。

「あっ…松本、君?」

入ってきたのは、同じクラスの男子、松本だった。
美緒は、知っている人で良かったと安心すると同時に、なぜ彼がこの時間に、この部屋に入ってきたのかわからなかった。
松本は、クラスの男子の中でもおとなしく、部活動もしていない。

「何か…探し物?」

美緒が困った表情をしていると、松本はそう話しかけた。

「ど、どうして・・・ここに・・・」

「あっ…あの、たまたま見かけて、いろんな教室とか、入って探していたようだから・・・」

美緒のことが気になり、こっそり後をつけていた松本は、素直にそう答えた。

「何を探しているの?」

松本は、まだ不思議そうにしている美緒に尋ねた。

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「いや、あの… 靴を…探していたの…」

美緒は、自分のローファーを探していた。
帰ろうとしたら、自分の下駄箱の中に、ローファーが入っていなかった。
今日が、初めてではなかった。ここ三日間連続で、ローファーが下駄箱から消えていて、昨日までは他の下駄箱や女子トイレ、教室から見つけることができていた。

「探すの、手伝うよ」

松本は、そう言って、部屋の中を探し始めた。
一昨日の朝教室に、上履きを履いていない美緒が入ってきた。
今松本の前に立っている美緒の足元には、新調したばかりと思われる真っ白なバレーシューズ。
誰かに上履きを隠されて、新調せざるを得なかったこと、そして今もこうして、自分の靴を一人探している美緒を、松本はとても不憫に思った。

「あっ・・・ありがとう・・・」

美緒は枯れるような小さな声で答えた。彼に声が届いたかわからない。
クラスで、学校でひとりぼっちだった美緒にとって、少しだけ心が暖かくなれた。

ひそかに、美緒への思いを寄せている松本。その気持ちにまだ気が付いていない美緒。
二人による「靴さがし」が始まった。