下校時間。

私は、下駄箱に行くのが怖くなった。
自分の靴箱を開けることが。

もう私の他に誰もいなくなった教室で、自分の席に座って帰ることに躊躇していた。

でも、帰らない訳にはいかない。

重い腰を上げ、下駄箱に向かう。


下駄箱に着くと、自分の靴箱の、スチール製の蓋の取っ手に手をかけた。

ひと息ついて、思い切りその扉を開けた。


嘘でしょ。

ローファーが無くなっていた。
朝入れたはずのローファーが。


「井上さんの探し物は、これだよね」

突然、呼び掛けられて振り向くと、クラスメイトの男子、加藤君が少し離れて立っていた。

左手に、一足のローファーを持って。