スリッパの、ペタペタした音が廊下に響く。
皆んなが履いている上履きとは明らかに違う、頼りない音。
靴下のままよりマシ、だけど、恥ずかしい。

教室に入っても、そのペタペタした音でみんなからの注目を浴びる。
もう、恥ずかしいのか、興奮しているのか分からなくなっていた。


そして、同じクラスの中に、もうひとり、興奮している人がいることを彼女は知らない。
スリッパ姿の足元を見つめる視線。
彼 は、その興奮を抑えきれなかった。

昼休み。人気の少ない下駄箱の前で、彼はおもむろに、彼女の靴箱を開けて、ローファーを取り出し、持っていたスポーツバックに入れて、下駄箱を後にした。

彼女はまだ知らない。
本当は、自分で捨てたり隠したりするのではなく、不意に、誰かに隠されたい。
そう願っても、叶うことのない事。彼女はそう思っていた。

が、それは既に起こっていた。
昼休みの時点で、彼女の靴箱にローファーは無くなっていた。
もう間も無く、終業時間。
彼女が下駄箱に来て、自分の靴箱を開けた途端、彼女の夢見ていた出来事が起こる。
しかも、上履きもない。

彼のバックの中の、彼女のローファー。
彼にとっても、お持ち帰りする罪悪感と、それを超越するだけの独占欲に浸りながら、ゆっくりと彼女のローファーと、スリッパ姿の彼女の足元、それにローファーまでも無くなって困り果てる彼女の様子を想像して楽しむことを、心待ちにしている。

彼女と彼の、待ち望んでいた至福の時が、間も無くやってくる。

終業時間を告げるチャイムが鳴った。

(完)